良くある症状
1、投球時の肘の痛み
野球肘の最も一般的な症状は、投球時に肘に痛みを感じることです。痛みは、肘の内側、外側、後方のいずれか、または広範囲に現れることがあります。初期段階では、投球動作の後半、ボールをリリースする瞬間に痛みを感じることが多いですが、進行すると投球動作全体で痛みを感じるようになります。痛みは、鋭い痛み、鈍い痛み、ズキズキする痛みなど、人によって表現が異なります。また、痛みの程度も個人差が大きく、軽い痛みを感じる程度の人もいれば、激しい痛みで投球動作が困難になる人もいます。特に、肘の内側の痛みは、内側上顆炎と呼ばれる野球肘の代表的な病態の一つであり、投球動作によって内側上顆に付着する筋肉が引っ張られ、炎症を起こすことが原因です。
2、投球後の肘の痛み
投球後にも肘の痛みを感じることがあります。これは、投球動作によって肘の組織に微細な損傷が生じ、炎症が起こるためです。投球後の痛みは、投球直後から数時間後に現れることが多く、安静にすることで軽減することが一般的です。しかし、投球を繰り返すことで炎症が慢性化すると、安静にしていても痛みが続くことがあります。また、投球後の痛みは、肘の腫れや熱感を伴うこともあります。これらの症状は、肘の組織の炎症が進行していることを示唆しており、早期の診断と適切な治療が必要です。特に、成長期の子供の場合、骨端線(こつたんせん)と呼ばれる成長軟骨が損傷すると、骨の成長に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
3、肘の動きの制限
野球肘では、炎症や痛みの影響で、肘の可動域が制限されることがあります。特に、肘の伸展(伸ばす)動作や回内(手のひらを下に向ける)動作が制限されることが多いです。可動域制限は、投球動作だけでなく、日常生活にも支障をきたすことがあります。例えば、服を着替える、物を持ち上げる、ドアノブを回すなどの動作が困難になることがあります。また、可動域制限は、肘の関節拘縮と呼ばれる状態に進行することがあり、関節拘縮になると、肘の曲げ伸ばしが完全にできなくなる可能性があります。関節拘縮を防ぐためには、早期の診断と適切な治療が重要です。
4、肘の腫れ・変形
野球肘が進行すると、肘の腫れや変形が見られることがあります。腫れは、炎症によって肘の組織に液体が溜まることが原因です。変形は、骨端線の損傷や骨の変形によって起こることがあります。特に、成長期の子供の場合、骨端線の損傷によって骨の成長が阻害されると、肘の変形が進行することがあります。肘の腫れや変形は、外見上の問題だけでなく、肘の機能にも影響を与える可能性があります。例えば、肘の変形によって投球動作が制限されたり、肘の痛みが慢性化したりすることがあります。
5、肘の不安定感
野球肘では、肘の靭帯や関節包が損傷することで、肘の不安定感を感じることがあります。不安定感は、肘がぐらぐらする、力が入りにくい、といった感覚で表現されます。不安定感は、投球動作だけでなく、日常生活でも感じることがあります。例えば、重い物を持ち上げる、ドアノブを回す、といった動作で肘が不安定になり、痛みを感じることがあります。肘の不安定感は、放置すると肘の亜脱臼や脱臼を引き起こす可能性があり、早期の診断と適切な治療が必要です。特に、内側側副靭帯の損傷は、野球肘の代表的な病態の一つであり、投球動作によって内側側副靭帯が断裂することが原因です。